Harley‐Davidson DYNA street bob
ハーレーの中でも、メーカーカスタム色の強い、「ストリートボブ」のフルエキの製作依頼です。
ご覧のように、バンス&ハインズのショート管が装着されているのですが、オーナーのA氏曰く、「うるさくて乗れない!!」そうです。
排気量が1584㏄もあって、このショートサイレンサーじゃあ、そら爆音ですわなあ。
A氏の依頼内容です。
■フルチタンの、集合管のフルエキである事。
■サイレンサーはメガホン・テーパーエンドで、ショートタイプである事。
■チタンの焼け色は、派手に付けて欲しい。
■RSTCシステムで、静かにして欲しい。
■マウントステーは目立たない様に。
また、サイレンサーの位置も明確に指示して下さいました。
打ち合わせの中で、サイレンサーのサイズやスタイルが決定しましたが、またまた静かにするのが困難なスタイルです。
まあ、どのへんで折り合いを付けるか、ということになります。
という事で、先ずはコレクター(集合部)の製作から。
チタンのパイプを角度切りして製作します。
差込部は油圧プレスを使って成形後、溶接します。
今回は、「派手に^^」という事なので、いちどピカピカに磨いてから、炙ってブルーの発色をさせました。
磨いてから焼くと、クリアーなブルーになります。
磨かずに焼いても、ハンドメイド感が出てすごくカッコいいのですが、ケースバイケースで使い分けています。
次にサイレンサーの製作です。
0.6㎜厚のチタンの板を、レーザーで切ってもらいました。
左側の扇形の、左右に開いている小さな穴は、マウントステー用のボルトの穴です。
これも一緒に、レーザーで開けてもらいました。
このふたつを巻いて、円錐状の筒を作ります。
円錐の根元が炙ってありますが、これは巻いた後の歪みを取る為で、装飾の為ではありません。
チタンは、こういった「巻き」などの塑性加工(力を加えて変形させる加工のこと)を行うと、元に戻ろうとする力が、他の金属に比べて強いのが特徴です。
これを「スプリングバック」といいます。
スプリングバックが大きい為に、写真のような、直径の小さい巻きを行なって溶接すると、どうしても無理な力が掛かって、完成後も、外に開こうとする力が掛かり続けます。
これを「内部応力」といいます。
これをそのままほっておくと、走行中に破断の原因になるので、その「内部応力」を取り去る為に炙って、「焼き鈍し」(やきなまし)しています。
サイレンサーの中身はこんな感じです。
このパンチングの中に、「RSTCシステム」が入ってます。
チタンは熱に弱いので、中身はステンレス製です。
このパンチングプレートと、先ほどの円錐チタンシェルとの間に、10㎜厚のグラスウールを入れて、排気の熱でチタンが変色するのを防ぎます。
シェルはチタン、インナーはステンレスなので、お互いに溶接が出来ません。
なので今回は、ステンレスインナーの先端に、チタンパイプをはめ込んでリベット留めし、そこにシェルを溶接する手法を採りました。
リベットは走行中、熱や振動で弛んでくることが予想されるので、内側を溶接機で溶かして固定しました。
レーザーで開けておいたボルト穴の内側に、ナットを溶接したプレートを仕込んで、サイレンサー側のステーのベースにします。
これもリベットで留めておきます。
サイレンサー本体は、今回は、完成するとオーバーホール出来ないタイプになるので、最終の溶接は、エキパイ完成後、音量のチェックをした後に行うことにしました。
うう、早く音が聞いてみたいいっ!! つづく
ワンオフマフラーのR-style。