モリヤス・アイアンワークス
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今回のサイレンサーインナー加工は、ハーレー&ダヴィッドソンの中では異色の存在感を放つ、「VRSCDX ナイトロッドスペシャル」です。
このバイクは、ハーレーとしては珍しく水冷DOHCエンジンを搭載しており、ハーレー製OHVエンジンの特徴である、エンジン右側のバルブプッシュロッドのカバーもありません。
時代の流れを感じさせる1250㏄Ⅴツインのモンスターマシンです。
オーナーのK氏の依頼内容です。
①購入した「バンス&ハインズ管」があまりにも爆音で、音質もあまり良くなく、耳鳴りがするので何とかして欲しい(あんまり静か過ぎるのはイヤ)。
②バンス管のサイレンサー部に、車体と固定する為のステーが無い。辛うじてスプリングで留まっているのみで、メーカーに問い合わせても「そんなハズは無い!!」と言われた。これで大丈夫なのか?大丈夫でなければステーを付けて欲しい。
今回、加工をお受けする上で、まず問題だったのはバンス管の「サイレンサーの小ささ」でした。
御覧のように異型のメガホンタイプなのですが、全長が300mmほど、太さも一番太い部分でФ85.0位しかありません。
そこにインナーパンチングパイプがФ60.5のストレートが入っています。
いつものように、RSTCシステムの特徴である、写真の様な加工法は、パイプが内部で2本並ぶ形になるため、小さなサイレンサーでは使えるパイプ径が限られてしまいます。
今回のサイレンサーでいつもの加工をすると、どう考えてもФ20.0~25.0までが限界でした。
これでは到底、1250㏄V-TWINというエンジンのスペックを考えると容量不足で、性能の低下をきたします。
ですので今回は、消音の原理はほぼ同じですが、いつもと違う加工方法をとる事にしました。
簡単に図解するとこうなります。矢印が排気ガスの流れになります。
排気ガスを排出する為の容量は、断面積で計算しますが、この仕組みでは3段階で徐々に細くなっています。これは、徐々に背圧がかかるようにして中低速のトルクアップを図る為の常套手段です。
1段目は1019.15立方ミリメートル、二段目は946.68立方ミリメートル、そして最後は907.46立方ミリメートルとなります。
途中のФ20.0の穴4ヵ所は、合計で1256.00立方ミリメートルとし、抵抗がかかるようにはしておりません。
なぜこういう数値になるのか、皆さん計算みてくださいね(笑)
ただ、実は、排気量から考えて、これでも容量は少なめなのですが、サイレンサーの形状から考えて、これが最大の容量となります。
また、チャンバー室の容量が取れないので、いつもほどの消音性能はありませんが、それでもかなり静かには出来ます。
実物の加工写真です。
今回は元々のインナーパンチングは、これ以上のパイプ径の物はスペース的に入らない為、残す事にしました。
先ず、内筒と外筒を製作します。
排気はまず、パンチングパイプと外筒の間を通り、外筒に開けられた4つの穴を通ります。
そこで反転して内筒と外筒の間を通り、最後は内筒の中を通って排出されます。
内筒と外筒を溶接します。Ф20.0穴の様子がよくわかります。
それを今度はインナーパンチングパイプと溶接します。排気入り口の外筒のテーパーコーン部がよくわかります。実はこのテーパーコーンの角度にも理論上の決まりがありますが、内緒です(笑)
次に、バンス管のアルミ製エンドとボルトオンします。
出口はテーパー形状になっています。
この形状にこだわる方も多いです。
このテーパー角も、イン側テーパー角と同じ角度です。出口の場合はこの部位の形状で音質の良し悪しも決まります。
最後に、サイレンサーシェルに挿入し、完成です。
グラスウールは交換し、出来るだけたくさん詰め込みます。
いつものRSTCシステムよりもこのグラスウールの任務は重大です。
消音性能を少しでも上げる為です。
この加工で、元々直管級の音量だったバンス管も、かなり静かになりました。
音質も、元々高周波の耳鳴りのする音質から、重低音になりました。
性能ですが、加工前は2000rpm以下はスカスカで使い物にならなかったのですが、そこもしっかりとアクセル操作について来るようになり、すごく乗り易くなりました。
加工前と加工後の、音付きの動画も撮影しましたので、こんどYouTubeにアップして、このブログでご紹介しようと思っています。
とりあえず次回はステーの製作を公開します。
サイレンサーインナー加工はR-style。